沿革
小児リウマチ学会の沿革
私が入局した昭和40年代には小児期のリウマチ性疾患といえばリウマチ熱のことを意味していました。小児科病棟には常に1-2名の急性リウマチ熱患者が入院しており、なかには心膜炎、連合弁膜炎、心不全を伴う例、重症の舞踏病などの例もあり、JIAはJRAまたはスチル病と呼ばれ、SLE,JDMが稀に入院し、PSSは教育入院という感じでした。当時の日本リウマチ学会では毎年リウマチ熱のシンポジウム、パネルデイスカッシヨンが組まれ、発表の部屋には細菌学者、免疫学者、循環器内科医なども集まっており、私などは聞きなれない用語にウロウロし、しかし、基礎医学の先生方の交流はとても盛んでした。
小児科医がリウマチ性疾患を発表する場として、当時は日本小児感染免疫学研究会(現、日本小児感染症学会)がありましたが、感染症の発表の場に間借りしているような印象でした。私の師である日本大学小児科、馬場一雄教授は「発表は専門学会で、自信があれば国際学会で」というスタンスでしたので、この学会での発表することは何か違和感がありました。その頃、小児科の分科会も日本学術学会に順ずる学会名にする傾向があり、「日本小児感染免疫学研究会」から「日本小児感染症学会」と改名され、自然にリウマチ関連の報告は激減しました。
このような傾向から小児科医でリウマチ性疾患を検討する場を作りたいという動きが盛り上がってきたのは当然と思われます。先輩諸先生の中には「学会が多過ぎる」との意見もありましたが、とにかくはじめてみようという「勢い」があり、杏林大学渡辺言夫教授を会頭として平成3年に第1回日本小児リウマチ研究会が開催されました。
初めのうち参加者は多くはありませんでした。しかし、討論の熱心さは他の学会には見られないほどで、当然のことながら??発表時間・質疑時間は守らない、座長が制しなければ朝まで話し合おうというような「主催者泣かせの良い伝統」が初回から出来上がってしまうほど熱心な話し合いの場が作られました。
平成13年からは日本小児科学会の分科会としても認められ、「日本小児リウマチ学会」と改名されました。
ほんの30年前までは小児期のリウマチとはリウマチ熱のことを指し、診断は細菌学的検査とレンサ球菌血清反応、20年前まではJRAの治療はアスピリン中心、そして10年前からMTXが導入され、アスピリンは禁忌となり、もし使って事故が起き訴訟となったら絶対に敗訴する時代となり、そして平成20年からは小児にも生物学的製剤が導入され、抗サイトカイン治療が始まり「JIAは治ります」、といえる時代となってきました。また、自己炎症症候群としてCINCA,TRAPS,PAPA,PFAPAなどが知られるようになり、診断には遺伝子解析が必要となって参りました。
このように考えると5年後、10年後がどんな時代になるのか楽しみであると同時に、ちょっと気を抜くとついていけない時代になっています。今後は諸外国、特にアジアの国々と綿密な関係を保ちながら、互いに交流しあうような学会にして行く必要もあると思います。
藤川医院 藤川 敏
歴代学会長
会期 | 会長 | 所属 | |
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初代 | 平成3年~平成17年 | 渡辺 言夫 | 杏林大学 |
2代 | 平成18年~平成21年 | 横田 俊平 | 横浜市立大学 |
3代 | 平成22年~平成25年 | 武井 修治 | 鹿児島大学 |
4代 | 平成26年~平成29年 | 伊藤 保彦 | 日本医科大学 |
5代 | 平成30年~ | 森 雅亮 | 東京医科歯科大学 |
歴代学術集会会頭
回 | 会期 | 会長 | 所属 |
---|---|---|---|
第1回 | 平成3年11月30日 | 渡辺 言夫 | 杏林大学 |
第2回 | 平成4年11月21日 | 小田 禎一 | 福岡大学 |
第3回 | 平成5年11月27日 | 藤川 敏 | 独協医科大学 |
第4回 | 平成6年11月30日 | 鉾之原 晶 | 鹿児島大学 |
第5回 | 平成7年10月28日 | 矢田 純一 | 東京医科歯科大学 |
第6回 | 平成8年10月26日 | 横田 俊平 | 横浜市立大学 |
第7回 | 平成9年10月25日 | 立澤 宰 | 国立小児病院 |
第8回 | 平成10年10月17~18日 | 加藤 裕久 | 久留米大学 |
第9回 | 平成11年10月23日 | 和田 紀之 | 東京慈恵会医科大学 |
第10回 | 平成12年10月14日 | 河野 陽一 | 千葉大学 |
第11回 | 平成13年10月27~28日 | 武井 修治 | 鹿児島大学 |
第12回 | 平成14年9月27~28日 | 小宮山 淳 | 信州大学 |
第13回 | 平成15年10月11~12日 | 赤城 邦彦 | 神奈川こども医療センター |
第14回 | 平成16年10月9~10日 | 稲毛 康司 | 日本大学 |
第15回 | 平成17年10月8~9日 | 伊藤 保彦 | 日本医科大学 |
第16回 | 平成18年10月6~8日 | 川合 博 | 長野県立こども病院 |
第17回 | 平成19年9月28~30日 | 野間 剛 | 北里大学 |
第18回 | 平成20年10月3~5日 | 有賀 正 | 北海道大学 |
第19回 | 平成21年10月2~4日 | 村田 卓士 | 大阪医科大学 |
第20回 | 平成23年2月11~13日 | 金城 紀子 | 琉球大学 |
第21回 | 平成23年10月14~16日 | 三好 麻里 | 兵庫県立こども病院 |
第22回 | 平成24年10月5~6日 | 岩田 直美 | あいち小児保健医療総合センター |
第23回 | 平成25年10月11~13日 | 大石 勉 | 埼玉県立小児医療センター |
第24回 | 平成26年10月3~5日 | 梅林 宏明 | 宮城県立こども病院 |
第25回 | 平成27年10月9~11日 | 谷内江 昭宏 | 金沢大学 |
第26回 | 平成28年10月21日~23日 | 冨板 美奈子 | 千葉県こども病院 ![]() |
第27回 | 平成29年10月6~8日 | 西小森 隆太 | 京都大学 ![]() |
第28回 | 平成30年10月26~28日 | 森 雅亮 | 東京医科歯科大学 ![]() |
第29回 | 令和元年10月4~6日 | 小林 一郎 | KKR札幌医療センター ![]() |
第30回(予定) | 令和2年10月2~4日 | 宮前 多佳子 | 東京女子医科大学 ![]() |
※第11回より小児科学会分科会として承認されました。